GO TOキャンペーンや、各自治体で消費喚起キャンペーンが準備されている中、改めて感じることが『観光を通して守れる日本がある』ということ。
これからの「観光」を考える上で、日本を知るために、他の国の価値観や、他の業種の人や、仕事に触れて、今までの習慣をもう一度見直すきっかけに・・・・
【外国人観光客と関わる方へインタビュー!】企画!第三弾目は約100年続く町家を守り、旅人からも愛されている町家ゲストハウス錺屋(かざりや)・御旅宿月屋(つきや)の女将 上坂 涼子さんにお話伺いました。
京都に泊まる。町家に泊まる。女将からみた京都の10年。
私たちが携わっているEXPLORER MAPでは、3ヶ月に1度、関西の宿泊施設に手配りでMAPを届けているのですが、ここ数年、大阪・京都の宿泊施設の急増には、本当に目を見張るものがあります。
京都市民泊ポータルサイト公表の旅館業法許可施設の推移(令和2年4月末時点)(PDF形式,88KB)を参照の元、外国人観光客研究所作成。
総宿泊施設は、2014年より約4倍。その中でも京町家タイプの宿泊施設は2014年から比べると、約23倍にも増えています。
観光地として、多くの人にとって特別な場所である「京都」。
その「京都」の町家ゲストハウスの女将がみて来た「観光」はどういったものだったのでしょうか。
珍しかった町家ゲストハウス
劉:いつから町家ゲストハウスをされているのですか?
上坂さん:錺屋(かざりや)は2009年春から、そして姉妹店の御旅宿月屋は2014年夏からです。元々、私は平安神宮近くにある町家ゲストハウス「和楽庵」さんで2006年から働いていて、そこから「和楽庵」女将の勧めで独立しました。私のように、ここから独立した町家ゲストハウスが京都には何店舗かあって、今は”女将仲間”として、それぞれ切磋琢磨しながら町家ゲストハウス運営をしています。
劉:2006年から京都のゲストハウスに関わっていらっしゃったんですね。14年前。当時の京都はどうだったんでしょうか?
上坂さん:当時、町家を利用した宿泊施設そのものが、10件くらい・・・?数える程しかありませんでした。選択肢が本当に少ない状態。ホテルや旅館とは異なり、安くて日本の昔ながらの暮らしを体験できる珍しい場所なので、開業当初から沢山の日本や外国からのゲストに来ていただいていました。なので、錺屋をオープンさせた時も、月屋をオープンさせた時も、有難い事に集客は自然に出来ていました。
劉:「他と違う」と言うのは集客をする上で、強みですね!今となっては、宿泊施設も増え、「町家」と名のつくものも、増えました。この状況をどのように見ていますか?
上坂さん:ホテルの乱立は目に余るものがあります。特にこの5年で急増しました。古くから残っている町家を残すより、何階層もある宿泊施設にした方が、投資をする方は回収効率がいいので、建て替えられることが多いんです。それで町家が消失していること、京都の街の風景が変わってしまうのを肌で感じています。
街の多様性を手を携えて守る
劉:宿泊できる場所といっても、宿泊する人にとってホテル・旅館・簡易宿所それぞれに求めていること、役割が異なります。上坂さんはゲストハウスをされている中で、ゲストハウスの良さは何だと思いますか?
上坂さん:小規模だからこそ反映できる個々の個性、小回りが利く点や、ゲストとの距離感、とにかく多様性に溢れているところが面白いところです。街に多様性がある事は、暮らす人にとっても、観光をする人にとっても魅力的だと思います。だからこそ、京都は面白い。ただ、最近だと小規模が故に、大規模の力に対抗することが難しいこともあり、今まではなかった横の繋がりを作ることで、手を携えて多様性ある個々を守っていこうという流れが生まれました。
劉:「どの街に行っても、どこに泊まっても同じ。」そう感じないことが、魅力ある街のポイントですね。ここにしかない魅力があるからこそ、何度も足を運びたくなる。大事なポイントですね。おっしゃっていた「横のつながり」とは、具体的にはどのようなものですか?
上坂さん:元々は小規模宿同士のつながり等はなかったんですが、2016年宿泊税が導入されるタイミングで、「京都簡易宿所連盟」という団体が発足し、京都のゲストハ ウス業界でも横のつながりや、情報共有などが盛んになりました。他にもここ2年は「 good hostels kyoto」という10軒の素敵なホステルの集まる団体にも属しています。
個人だと声が小さいけど、団体だと声を届けやすい。そして、メディアなどからも取り上げていただきやすくなりました。
実は、今回のコロナを受けて廃業に追い込まれているゲストハウスも少なくなく、恐縮ではあるのですが、京都のゲストハウス文化や、町家を守りたい想いからクラウドファンディングにも挑戦しました。「京都簡易宿所連盟」に加盟するゲストハウス、ホステルのうち22軒が参加しました。
日本向けと、海外向けと2度に分けてチャレンジをしたのですが、予想を上回るご支援を頂戴したんです。
本当にたくさんのご支援と、応援のお言葉を頂き、支援=お金だけではないと実感しましたし、本当に励まされました。 常連さんからのご支援もようさんいただきました。素直に助けて、と言うのってなかなか抵抗があったのですが、こういう形で繋がる想いもあるなぁと。 ほんまに参加してよかったなぁと思っています。
上坂さん:京都のゲストハウスを運営している人の中には、宿泊する施設ではありますが、何よりも「人が集まる場所、コミュニティーを作りたくてやっている人」が沢山います。大きな資本を持っている訳ではないので、それぞれの力は大きくないですが、この個性あるゲストハウスの文化は守っていきたいと思っています。
近年の宿泊施設の急増によって、「泊まる場所」は一緒くたにされがちですが、それぞれの旅における役割は様々で、その中にも「日本の良さ」を感じる素敵な場所は沢山あります。どこに行っても同じではない、異なる個性があるから、それを体験しに旅人は足を運びます。
暫くは、日本人の国内の観光需要を喚起することがテーマになりますが、だからこそ今住んでいる街に多様性があって、面白い場所であるかを向き合うチャンス。上坂さんがゲストハウスに関わり始めてから今までの経緯を伺っている中でも、改めて感じることができました。
次の記事では、実際にいらっしゃるゲストが何がきっかけで宿を知ったか、またどのようにゲストと関わっているかなど、ゲストを中心にお話を伺っています。是非、ご覧ください。