包丁専門店・「タワーナイブズ大阪」さんへインタビュー(2)宣伝をしないで集客??

【外国人観光客と関わる方へのインタビュー】企画!日本人にも、外国人にも人気の包丁専門店『タワーナイブズ大阪(TOWER KNIVES OSAKA)』の店主ビヨン・ハイバーグさんにお話を伺っています!

 

前回は、ビヨンさんの包丁との出会いと、観光客がいなくなった年から開業されたお店の様子について、ご紹介をしました。→インタビュー(1)はこちら。

 

タワーナイブズさんでは、開業当初より集客をするための宣伝をしていません。でも、年々お客さんが増え続けています。キーワードは『人との関わり』

今回は、地元との関わりを大事にされているお話と、リピーターを生む集客についてお話を伺っています。

 

『地域全体』で観光を盛り上げる!

劉:開業当時、観光客ではなく、地元に住んでいる人が応援してお客さんを紹介してくれたとおっしゃっていました。

私がビヨンさんと話していて、いつも思うのが、「地域全体で盛り上げる」ことを常に考えていらっしゃることです。どのように関わっていますか?

 

ビヨンさん:実は最初は受け入れてもらえるか、不安でした。開業当初、店頭にお店のリーフレットを置いていたんですが、そのリーフレットが次の日には失くなることが度々あったんです。きっと、嫌がらせをされたのだと思っていました。

ある日、周辺の居酒屋に呑みに立ち寄った時、なんとそのリーフレットがお店に置かれていたんです。しかも1軒ではなく、何箇所ものお店で・・・。開業当時、興味本位で立ち寄ってくれた人たちが、「面白い場所」と思ってくれて、店頭のリーフレットを持ち帰って、他の人に紹介をしてくれていました・・・・・本当に嬉しかった!感動しました!!!

「新世界」は、当時観光客に印象を聞くと「汚ない」イメージがあり、実はあまり観光客が多くない場所でした。通天閣は大阪のシンボルとして紹介されてることも多く、立地的にも便利なのに・・・そのイメージを変えたくて、朝来たら、お店の前だけでなく周辺も掃除をするようにしてたんです。

そしたら、挨拶をする人が増えて、近くの喫茶店の人が「ありがとう」と言ってコーヒーを持って来てくれたり、地元の人たちがお客さんを紹介してくれたり、私も皆さんのお店へ足を運んだり・・・そうやって、気がつけば、地域の人との関わりが生まれていました。

 

劉:地域のパソコンの苦手な人に、ビヨンさんが教えに行ったりされてましたもんね!(笑)

 

ビヨンさん:自分だけが良くなるんじゃなくて、この地域全体が良くなるのが絶対にいい!私のお店に来る観光客に観光のアドバイスを聞かれた時には、地元のいいお店をいつも紹介します。そしたら、観光客も喜ぶし、この一帯が盛り上がる。みんなWIN-WIN。皆さんに支えられて今があるので、とても大事に思ってます。

 

劉:観光客の目線で見ても、魅力ある場所が1箇所よりも、沢山ある地域の方が楽しいですよね!地域でいい場所を紹介しあえる関係があるのは、相乗効果で盛り上がっていいですね!

 

『リピーターを生む集客』勝手にお客さんが来てくれる。

劉:沢山のお店を見ていますが、タワーナイブズさんはとにかく国籍を問わず、リピーターのお客さんが多いことが特徴です。お客さんは何をきっかけにいらしてますか?集客の秘訣は?

ビヨンさん:ここ数年、日本国内ではテレビで度々紹介していただいたので、それがきっかけの人もいらっしゃいましたが、ほとんどがクチコミです。外国人の観光客も場合も、トリップアドバイザーなどでも紹介いただいているようですが、一番多いのは友人や、家族からのクチコミ・紹介で、これがメインです。

 

劉:実際にタワーナイブズさんを訪れた人から、周りの知人に紹介したケースが殆んどなんですね!人から人へ・・・私も旅行へ行くときは、ネット情報よりも、友人や旅先で出会った人に紹介してもらった場所へ足を運ぶことが多いです。

 

劉:一度来たお客さんが次のお客さんを呼び、一度来たお客さんはリピーターとなって、また戻って来るんですね。

 

ビヨンさん:はい。やっぱり、1回行ったから終わり。ではなくて、何度も来たいと思ってもらえる魅力がお店になくてはならない。何度来ても、新しい発見がある。だから、私たちも成長し続けるために勉強が必要です。毎年、海外から来てくれるリピーターは沢山いらっしゃいます。わざわざ包丁を買うためだけに、ヨーロッパから数日だけ大阪にくる料理人の方もいらっしゃいますよ!

 

売り込まない

劉:接客する時に気をつけていることは?

 

ビヨンさん:売り込まないことです。売り込みはせず、しっかりと説明をする。

本当の説明をするだけで、だいたいみんな欲しくなるんです。例え、その時に買わなくても、しっかりと良さを心に届けていたら、後で気になって買いに来られることはしょっちゅうあります。「お金貯めて来ました!」とか「結婚するので、買いに来ました!」・「記念日にプレゼントしたくて買いに来ました!」とか・・・

 

本当に良いと思ったら、お客さんの方から欲しいと言われる。ただそれだけのことです。日本の道具は、世界と比べても本当に素晴らしいです。ネット上の情報だけでなく、実際に本物の包丁に触れて、いいものとそうでないものの切れ味の違い、食材の味わいの違い、道具の奥深さを知ると、絶対に感動します!その特別な体験は、きっと誰かにシェアしたくなる。私たちのお店で口コミ来店が多いのも、体験を通じて日本のものづくりを伝える事、喜んで貰う事にこだわっているからだと思います。

お店では試し切りができます。

沢山の職人さんは日々、さらに良いものを作るために努力されている。日本の素晴らしいところです。職人さんが頑張っているのに、誰も説明しなかったら、お客さんは理解する機会がない。細かい素晴らしい部分を知る機会がなかったら、やっぱり安い物に流れて行くんです。

私たちの役割は『お客さんを育てる』こと。私たちは職人さんの努力の結晶である包丁の価値をしっかりと説明する。伝えることに集中する。職人さんが常に努力しているように、私たちも伝えるための勉強はずっと必要なんです。


お客さんへ伝えるべきは『アピールではなくて、説明』だとビヨンさんは語ります。

いくら「いいですよー!」とアピールをしても、何がどう良いのか。どこが他と違って価値があるのか、説明がなければ、表面的な部分で終わってしまいます。

人は感動した時、嬉しかった時、その想いを家族や友人にシェアしたくなるものです。「良いか悪いか」は、お店が言うことではなくて、お客さんが判断して周りに伝えるもの。だから、お店からの宣伝に力を入れるよりも、今日『目の前の人をどれだけ喜ばせるか』にこだわっているのだとおっしゃっています。

ーーーーリピーターを生む集客のヒント。地域の人たちと関わりあって盛り上げる街づくり。

少し手間はかかりますが、コロナの後に待っている、より効率化を求められる社会の中で、この手間の部分をどういった形で残していくか。向き合うことが出来れば・・・と思います。

最終回は、改めてこれからの『観光』・『日本の魅力』をビヨンさんの視点で伺っています。是非、ご覧ください。

 

次の記事:インタビュー(3)憧れの「日本」を守る為に。

前の記事:インタビュー(1)観光客が消えた年から全てが始まった!

 

記事を書いたのは私:
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ABOUTこの記事をかいた人

劉 賞美(Liu Shangmei)

高校卒業後、北京語言文化大学へ語学留学。
2002年より中国の国営貿易商社、中国中紡集団公司(北京市)の日本法人会社にてアパレル生産管理、中国工場管理、貿易事務、社内中国語講師担当。
当時一般客へのVISAが下りにくい中、出張で来日する中国人の通訳と観光のアテンドなども行う。
退社後は、中国語の個人レッスンをベースに2010年より中国語グループレッスン、日中語学交流会を現在も主催・運営しており、パナソニックセンター大阪にて中華圏の企業、行政機関向けのB to B通訳を担当。
また、高島屋百貨店にて訪日外国人を対象とした通訳アテンド業務を経て、株式会社エースブリッジに入社。
日々、外国人観光客を集客している店舗様へ足を運び、また時に外国人観光客や、在日外国人の生の声を聴き「今求められているモノ」を発信すべく、2010年より続いている「外国人観光客研究所」の所長に2017年7月より就任。