「ホントにいい感じですよ!」
インタビューへ行った当日、ビヨンさんから伺った第一声がこの言葉・・・この期間だからこそ出来ること。『スタッフのレベルを上げる研修』に取り組まれていました。そう、この言葉はスタッフたちの成長に心が熱くなって発せられた一言です。
国内のメディアでも度々紹介され、またトリップアドバイザーの外国人に人気な大阪スポットでも常に上位にランキングしている包丁専門店『タワーナイブズ大阪(TOWER KNIVES OSAKA)』さん。日本人だけでなく、外国人のお客さんも多く訪れる新世界の人気店です。
今回の【外国人観光客と関わる方へのインタビュー】は、ここ大阪・新世界通天閣近くの タワーナイブズ大阪 ・そして東京スカイツリーの足元、東京ソラマチにある タワーナイブズ東京 を営むデンマーク育ちのカナダ人ビヨン・ハイバーグさんにインタビューさせていただきました。

5月と6月は、NHKの「まる得マガジン」包丁レッスンに出演中!包丁について、丁寧にご紹介をされていますよ!
観光客が消えた年から始まった!
タワーナイブズ大阪(TOWER KNIVES OSAKA)さんは2011年1月に開業しました。
そうです。東日本大震災があった年。「街に観光客がいなくなったのが、今回で2回目。今の状況を乗り越えた先、以前と同じはあり得ない。」とビヨンさんは語ります。
開業当時、想定外の震災で街から観光客が消え、日本国内でも自粛ムード続き、厳しい環境下でタワーナイブズさんはスタートしました。重ねて、外国人が包丁を紹介することに対する方々からの反応。。。容易ではない経験が、今、この2回目となる大きな試練を捉える上で、大きな糧となっていることを感じました。
ビヨンさん:いろんな事が急に変わりました。昔のように戻らない事ばかり考えて悲観するのではなく、昔より良くなった!って思えるために、この時間をどう使うか。
この時間は、今までの考えや、やり方を変えるチャンスを与えられていると考えています。コロナが世界に広がったことは悪いことは悪い。でも、「じゃあ、どうするか!」前向きに今を進めていきたい!

価値観を変えるターニングポイント。
そう捉えるビヨンさんが、開業からどのようなことを経て、今に至っているか。今回はみなさんにお伝えをしていきたいと思います。
日本の『包丁』との出会い
劉:ビヨンさんはどのようにして和包丁に出会ったんですか?
ビヨンさん:23歳で初来日し、色々な仕事を経て、堺の刃物メーカーに出会いました。そこで初めて日本の包丁に触れて、和包丁の切れ味にとにかくびっくりしたんです!
もともと小さい頃から刃物が好きで、5歳頃からポケットナイフとか・・・とにかく沢山のコレクションを持っていたんです。
日本の包丁について、噂では聞いたことあるけど、感動しました。こんな楽に切れるとは、経験したことがなかった!!!
劉:それから,その堺の包丁メーカーで約9年勤務なさったんですよね!
ビヨンさん:そうなんです!そこでは、日本の包丁を海外の卸会社へ大量に輸出してました。
世界に日本の包丁の素晴らしさを伝えたい!と思っても、売り先は卸なので、直接包丁を使う人ではないんです。ただ「売る」だけではなく、魅力を伝えるにはちゃんと説明する場所、包丁を体験する場所が絶対に必要だと思って、ショールームを個人でつくる決心をしました。
説明にこだわる!だから体験する場所が必要!
劉:はじめは輸出の仕事は続けながら、個人でショールームをスタートさせたんですね!
ビヨンさん:はい。始めは今の場所ではなく通天閣近くのレストランの2階のギャラリーだったところを借りて、包丁のショールームという形で2011年にオープンしました。さぁ!これから日本の包丁を英語で説明できると思った矢先に・・・・震災があり、街から人がいなくなりました。思いっきり暇になったんです。
劉:観光客もいなくて、日本全体に自粛ムードがあった中での開業はとても厳しかったと思います。どのようにその時期を乗り越えたんですか?
ビヨンさん:「包丁の魅力を伝える」為に必要なことを、とにかく頑張りました。
周りに飲食店も多いのですが・・・ある日、お酒を飲んだ地元の日本人のお客さんが興味本位で寄って来られたことがあったんです。そのお客さんは、色々な質問をして来られたんですが、その時、「日本人は日本の包丁について、知っていると思っていたけど、全然知らない。」事がわかりました。
そこで、様々な質問に日本語でしっかりと答えれるよう、とにかく日本語を猛特訓しました。そして、より深い内容も説明できるよう、勉強をしました。もう本当に辛い勉強の時期・・・。
地元の日本人の方々に丁寧に説明して、情熱を持って伝え続けている内に、「包丁を説明してくれる面白い場所」として地元の人から口コミで広がって、次の新しいお客さんが来るようになりました。
日本料理の板前さんも来ましたが、最初はハードルが高かった。「なんで外国人が包丁の説明するんや?!」と厳しく構えていらっしゃったのが、説明をした次の日には、たくさんの料理人を連れて来てくれた・・・様々な人の紹介と応援があって、今では日本各地から料理人の方も足を運んでくださるようになりました。
劉:タワーナイブズさんでは1人のお客さんに対して、1時間以上かけて接客することはしょっちゅうですもんね!五感を使って包丁を体験できるので、時間が過ぎるのがあっという間です!

2011年開業当時の様子
ビヨンさん:そうやって、日々勉強を重ねている内に、少しずつ訪日観光客が戻って来たんです。それまでに、集中して勉強した期間があったので、深い内容を日本語でも、英語でも説明できるようになっていました!
実は、外国人のツアーが最初にタワーナイブズさんを訪れたのは、「トイレを借りるためだけ」だったんです。トイレついでに、待っているツアー客へ包丁を紹介したところ、その後の旅行工程をキャンセルしてでも、ここに残りたいという事が何回かあって、今は「ツアー中に必ず訪れる場所」に組み込まれるようになりました(笑)
劉:まさかトイレ待ちの人に包丁を説明した事が、今ではツアーコースに組み込まれるまでになるなんて、思いも寄らないですね!何が将来の大きな縁になるか分からないからこそ、目の前の方との関わりが大事ですね。
(実は・・・この外国人のツアーは、前回のインタビュー企画でご紹介した末石さんが所属されている「オールスター大阪ウォーク」さん。ご縁ですね!)
ビヨンさん:はい。こちらからお願いした訳でなく、目の前の人に丁寧に説明をして伝える、喜んで貰うことにこだわる事で、その人が次の人を連れて来てくれたんです。最初の勉強の時期があって、今があると本当に思っています。
お客さんが来ない「集中できる時間」は必要だったんです。ネットで調べれる浅い内容でなく、専門性を深く掘り下げて磨く事で、お客様の感動体験に繋がる。今回のコロナでも思い切りお客様が減ったので、今の内に色々見直して、さらに良くなる為に必要な時間だと思っています。

今は「伝える力」を磨く時間
今、この時期が次に成長する為に必要だと思えるのは、実体験があるからこそだと言えますね。
タワーナイブズさんは最近の5年間では、お客さんが日本人、外国人共に増え続け、包丁の生産が追いつかなくなるほど、めまぐるしい日々を送られていました。
立ち止まる時間ができたらこそ、今までと違う価値を生み出すために時間をかけていらっしゃるようです。では、何故そこまで人が訪れるようになっていたのか・・・・次の記事では、その辺りをもう少し深く伺っています。是非ご覧ください。