包丁専門店・「タワーナイブズ大阪」さんへインタビュー(3)憧れの「日本」を守る為に。

【外国人観光客と関わる方へのインタビュー】企画!日本人にも、外国人にも人気の包丁専門店『タワーナイブズ大阪(TOWER KNIVES OSAKA)』の店主ビヨン・ハイバーグさんにお話を伺っています!

 

前回は、リピーターの絶えない集客の秘訣、アピールするのではなく伝えることを大事にしているお話を伺いました。→インタビュー(2)はこちら

 

最終回の今回は、世界における日本の魅力、そしてこれからのことに向けてお話を進めていきます。

普段から、日本人だけでなく海外の方との多く触れ合い、自身も外国人として日本を見る中で、何がこの国の魅力で、他の国にはない価値なのか・・・一緒に感じていければと思います。

和食と日本の道具

ビヨンさん:包丁の切れ味で食材の味が変わることを知っていますか?

劉:・・・・?

ビヨンさん:(笑)実は、日本の包丁が楽に切れることや、切れ味がいいことは知られていても、素材の味が変わるところまではあまり知られていない。去年ヨーロッパで料理学校の先生に包丁を伝えた時も、料理の専門家の先生方も知らなかったんです。

切った断面が包丁によって全く違います!

 日本の道具は、和食と密接に繋がっています。海外では、(傷んだ)食材の味を隠すために調味料を多く使ったり、味付けが濃かったりする調理法が多いです。

 和食は逆です。味を隠すのではなく、素材を活かす調理法。本物の包丁で切った食材は、断面が綺麗で酸化しにくい。舌に乗せた時の味わいが全く違って、食材本来の濃い味を味わうことができるのです。ほんの少しの塩や、醤油だけで、旨味を楽しめる繊細なお料理なんです。今の和食があるのは、日本のこだわって作られてきた道具があるから。

美味しいものを食べたい!と思う気持ちは世界共通です。

 だからこそ、食材の本来の味を引き出す本物の道具を使いたい!日本の包丁に限らず、日本の様々な技術は、他の国に比べて優れているものが沢山あります!そこにニーズがあるんです。

 知ると使いたくなりますよね!ヨーロッパで紹介した料理学校の先生も、その半年後には日本へ包丁を買いにわざわざいらっしゃいました(笑) 

劉:「食」一つをとっても、素材、調理法、道具、空間・・・そこに関わる様々なことに特別な意味があって、海外とは異なる「日本の魅力」なんですね。あぁ、私も知らないことだらけです。

 

日本に憧れる海外の「日本ファン」

2019年 デンマークでの講演の様子。

去年2019年にビヨンさんは日本外務省の依頼で、ヨーロッパへ日本の刃物を伝えるために数週間、各国にて講演会や、料理教室を行われました。そこには、参加するために何時間もかけて遠方から駆けつけた『日本ファン』が大勢いらしたようです。

ビヨンさん:本当にびっくりしました!まだ日本に来たことはないけれども『日本に憧れる日本ファン』が沢山いました!

私は、彼らの『日本への憧れ』を無くさないように、日本はこれからも日本らしさを追求して欲しいと思っています。

最近は手間をかけることよりも、早く、大量にこなすために、質よりも量。海外と同じように・・・と海外のレベルに下げて提供しているのが残念でありません。数だけを追うと、目の前に時間をかけることが忘れられてしまいます。

本来、日本の良さは時間をかけてじっくりと向き合う『真面目さ』。そして、『完璧主義』にあると思います。より良いものを追求する心、一連の動きをイメージした繊細な配慮が施されたもの、細やかな気配り・・・どれをとっても、ものづくりは勿論、文化、習慣、日本の暮らし全体で感じる、他の国にはない素晴らしい特徴だと思っています!

そして、そこに共感して日本に憧れ、特別だと思っている人が沢山います。そういった人たちを「他の観光地と同じだった・・・」と思わせて、がっかりさせたくない。

堺から定期的にいらっしゃる職人さん

劉:海外の目線で日本を見た時、そこが日本の特徴だと感じるんですね!ここ数年、インバウンドが急増したことで、どうしても追いつくために、手間をかけることが後回しになっていたことが多かったかもしれません。

 

「日本人にこそ、丁寧に伝える」

ビヨンさん:私のお店では、海外の方に説明するよりも、日本人の方にこそ、しっかり説明をするように心がけてるんです。日本で暮らす人こそ、もっと日本に興味を持って、知って貰いたいんです。

日本は、外国人観光客だけにとって特別なものではなくて、日本人にとっても発見や感動がある素敵な魅力で溢れている。私も日本に来て28年。それでも毎日新しい発見があって、毎日勉強させられています。

最近までは、外国人観光客が増えすぎて、日本人が離れていく場所もありました。それはバランスが悪い。観光客向けだけの場所は、そこへ来る喜びが落ちると思います。

劉:確かに、私も「日本らしさ」について、海外からの観光客を通して知る機会が多いです。【観光】は、外国人観光客のためだけではないですもんね!もっと、私たち自身も「日本のよさ」に興味を持って、日本を楽しみたいです。

 

そして、次の10年へ・・・・

劉:タワーナイブズさんは来年で10周年を迎えるのですが、次の10年はどのように考えていますか?

ビヨンさん:お客さんと作り手を繋げたい。そのために勉強と教育をこれからも深めたいです。スタッフだけではなく、お客さんへも。説明を磨いて、伝えていくことで、理解する人が増える。するとニーズが増える。包丁の作り手はどんどん減って来ていたんですが、そこにニーズを作っていくことで、作り手が必要になるんです。ものづくりの応援になるんです。

ある包丁職人さんは、もともと廃業する予定でした。でも、私の店で沢山お客さんが来てくれるようになって、包丁が足りない。そこで、職人さんは、これからの将来ために廃業ではなく、弟子を取る道を決意をされたんです。ニーズを作っていくことは、日本のものづくりの応援に繋がるんです!

お客さんも、作り手の方も喜んでもらう事が、結果として私たちの喜びになる。その為にこれからも磨いて、育てて・・・関わる皆さんと成長していきたいと思います!

色々調べたり、見たりするよりも、ここに10分いるだけで、日本の道具の素晴らしさは分かります。是非、体験をしてほしい場所です!


 

なるほど・・・・

  • 作り手(とことんいいものを追求する)
  • 伝え手(しっかりと説明して、意味を深め、価値を広げる)
  • 享受する人(日本で暮らす人・海外の人)

この3つがしっかりと役割を果たすことで、『日本の観光』はもっと明るいんだ!と感じる事が出来ました。

ビヨンさんのお話を伺って、日本の観光におけるこれからの10年は、【伝え手】がとても重要なのが分かりました。ただ見せるだけ、並べるだけではなく、価値をどのようにして日本人に、外国人に伝えていくか。

世界が憧れる日本・とことんいいものを追求する【作り手】を守るのも・・・【伝え手】次第。

一度、観光客が増加してニーズがある事が分かった今だからこそ、もう一度『日本のよさ』を伝える力、磨きたいものです。

 

とても貴重なインタビューとなりました!

 

有難うございました!

 

前の記事:インタビュー(2) 宣伝をしないで集客??

インタビュープロローグ:流行らせない!持続可能なこれからの観光は・・・

記事を書いたのは私:
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ABOUTこの記事をかいた人

劉 賞美(Liu Shangmei)

高校卒業後、北京語言文化大学へ語学留学。
2002年より中国の国営貿易商社、中国中紡集団公司(北京市)の日本法人会社にてアパレル生産管理、中国工場管理、貿易事務、社内中国語講師担当。
当時一般客へのVISAが下りにくい中、出張で来日する中国人の通訳と観光のアテンドなども行う。
退社後は、中国語の個人レッスンをベースに2010年より中国語グループレッスン、日中語学交流会を現在も主催・運営しており、パナソニックセンター大阪にて中華圏の企業、行政機関向けのB to B通訳を担当。
また、高島屋百貨店にて訪日外国人を対象とした通訳アテンド業務を経て、株式会社エースブリッジに入社。
日々、外国人観光客を集客している店舗様へ足を運び、また時に外国人観光客や、在日外国人の生の声を聴き「今求められているモノ」を発信すべく、2010年より続いている「外国人観光客研究所」の所長に2017年7月より就任。